染色家・志村ふくみさんの『一色一生』

読書
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日本の染色家、志村ふくみさんのエッセイ『一色一生』を読んでいる。

志村さんは染色家。草木からの染めを極めた方で、人間国宝でもあるそう。今年100歳。

著書を読むのは初めて。2月に買って、4ヶ月の積読期間を経て、いま、毎晩のように心を震わせながら読んでいる。

知ったきっかけは石井ゆかりさんの著書。

私のバイブル『天秤座』の中で、志村さんの文章が引用されていて、『一色一生』が紹介されていた。

志村さんのお名前と著書は15年ほど前から知っていて、引用されていた文章も覚えていて。

とにかく、ずっとずっと気になっていたんだけど、なぜか「読もう」とならなかった。

でもアラフォーになってようやく「いまがタイミングかも」と思えたので、買ってみた。

子どもが寝静まった後に、少しずつ読み進めながら、その表現力に衝撃を受けている。

戦後間もない時期に、兄弟を早くに亡くしたりもしながら、2人の子どもを抱えたまま離婚して、その子どもたちを養父母に預けて「染め」の世界で生きていくと決め。

その道を追求していく過程は、どんなものだったんだろうと想像するだけで、心がキュウッとなる。

7、80年ほど前の時代に小さい子どもを外に預けるという決断は、もしかしたら今のそれとは異なったかもしれないけど、

それでも、相当な覚悟が必要だったんだろうなとは思う。

とりあえず「なんだこの文章、すごすぎるだろ」と思いながら読んでいるけど、なぜこんなに衝撃を受けているのかを、私はまだうまく表現できない。

おそらく一般的に、こういう「職人」の方々は、自分が体感している世界をこんなに言葉で表現しないんじゃないかな。

作る「もの」でその世界を表現する人がほとんどなのでは。

その人がどんな世界を見ているかを言葉で体験できるなんていうこと、ほぼないんじゃないか。しらんけど。

志村さんは自分が体験している世界を文章で表現できるからすごいんじゃないかな。

自分が染めをする過程で、糸を作る過程で、どんな世界を見ていて、それがどれだけ繊細でそれだけ難しいのか、どれだけ美しいのかなどを、

読者も一緒に体験させてもらっているような気になってくる。

自分には絶対にできない世界。絶対に無理。でもこの人のことを、この人が表現している世界を、そのもとになっている自然の草木のことを、とにかくシンプルにすごい、偉大だと思う。

それくらいにすごい表現力。これは、もう、ほんとうに芸術だと思う。

正直「もっと早くに読んでいたら私の人生は少し変わったかもしれない」と思うほど。

その一方で「10年前の自分が読んでも面白くなかったかもしれない」とも思う。そう思いたいだけかもしれない。

1924年(大正13年)生まれ。写真を見ると、もうすぐ100歳とは思えないような凛とした佇まいで、思わず固まった。

娘さんとの連名で運営されているしむらのいろというウェブサイトもあります。

京都で染色を学べる学校も運営されているそう。夏に2日とか3日のワークショップも開催しているらしい。子どもが手を離れたら行ってみたいな。

まだ最初の章を読み終わったくらいなのですが、これからじっくり読み進めていきたいと思います。

『一色一生』| 志村ふくみ | 講談社文芸文庫

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